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自己破産用語集

受任通知

一般に、弁護士に自己破産を依頼すると、債権者に対して受任通知(弁護士が債務整理の依頼を受けたという通知)を発送します(※法人や事業者の破産では発送しないことがあります。)。この受任通知により、貸金業法上、金融機関は、債務者に対する督促行為が禁止され(金融機関以外は止まらないことがあります。)、借金の口座引落も止まるため、落ち着いた状態で破産申立ての準備をすることができます。

債権者平等原則

自己破産は、全ての債権者を平等に取り扱う手続であり、これを債権者平等原則と呼んでいます。そのため、全ての債権者を手続に載せる必要があり、一部を除外することはできません。また、偏頗(へんぱ)弁済(一部の借入先にだけ優先して返済する行為)など、債権者平等を害する行為が禁止されます。

偏頗(へんぱ)弁済

特定の債権者にだけ優先して返済する行為を偏頗(へんぱ)弁済と呼んでいます。自己破産は、全ての債権者を平等に取り扱う(債権者平等原則)手続ですから、偏頗弁済は禁止されています。よくあるのは、勤務先、親族、知人など、金融機関ではない債権者に対して、「迷惑を掛けられない」と優先返済してしまうケースです。偏頗弁済をすると、当該債権者に対して、破産管財人が返金を請求したり、破産者本人に補填が求められたり、免責が不許可になったりする可能性があります。

所有権留保

自動車ローンを組んでいる場合、ローンを完済するまで、車検証上の名義人がローン会社(販売店)になっており、所有権が留保されていることがあります。弁護士が、自動車ローン会社に受任通知を送ると、自動車は、引き揚げられ、業者オークションで転売の上、自動車ローン残高に充当されます。なお、銀行借入の場合、自動車購入目的であっても、所有権留保が付いていない場合があります。また、ローンで購入したiPhone、iPad、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などにも、所有権留保が付いていることがあります。

第三者弁済

破産者の債務を第三者が肩代わりすることを第三者弁済といいます。自動車ローンの組んでいる人が、自動車を維持するため、親族に自動車ローンを第三者弁済してもらうケースがあります。

口座凍結

口座を保有する銀行から借り入れがある場合、その銀行に受任通知を送ると、口座が凍結されます。口座凍結とは、入金はできるが、出金ができない状態です。受任通知到達時(凍結時)に残存していた預金は、借金と相殺されてしまいますが、受任通知到達後に入金された預金との相殺は、法律上、禁止されています。口座凍結されるとATMが使えないため、給与振込口座である場合には、予め、別口座に変更しておく方が便利です。ただし、凍結後に入金された給料であれば、窓口での出金に応じている銀行が多いため、給与振込口座の変更は、必須ではありません。口座凍結は、保証会社が銀行に代位弁済すると、解除され、その後は、通常通り、利用できます。

保証会社

銀行からの借り入れには保証会社が付いていることが多く(付いていない場合もあります。)、銀行に受任通知を送ると、保証会社が銀行に一括返済します。これを代位弁済と言います。これにより、保証会社が債権者となります。

機関保証

親族などに保証人になってもらうのを人的保証、株式会社に保証料を支払って保証してもらうのを機関保証といいます。日本学生支援機構などの奨学金、住居の家賃については、かつては、人的保証を求められることが多かったですが、現在は、機関保証であることが珍しくありません。

過払金

過去、利息制限法と出資法の上限金利が異なっており、多くの消費者金融が、利息制限法を超え、出資法を超えない金利で貸し付けていました。しかし、利息制限法を超える金利は違法であり、払い過ぎとなります。これを過払金と呼んでいます。過払金は、だいたい平成19年より前からキャッシング取引が合った人に発生します。ショッピング利用では発生しません。また、最後の取引(返済)から10年で消滅時効となり、回収できなくなります。自己破産では、過払金が発生している可能性がある場合、調査が必要になるため、既に完済している債権者であっても、弁護士に申告する必要があります。

官報

政府が発行する新聞のようなもので、法律の公布や国家試験合格者の掲載などが行われていますが、破産手続開始決定、免責許可決定は官報で公告されます。インターネットで見ることができます。インターネット版官報は、無料版では90日分しか見ることができず、画像ファイルであるため、氏名検索はできません。

信用情報(ブラックリスト)

CIC、JICC、全銀協などがあります。返済を滞納すると、その情報が載り、一定期間、新たに借金をしたり、ローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることが困難になります。

破産手続開始決定

破産手続は、破産手続開始決定の前後で取り扱いが異なります。破産手続開始決定までの資産は換価(処分)対象になりますが、開始決定後の資産は自由財産として、換価(処分)対象になりません。破産手続開始決定により、破産管財人の権限が開始し、破産者の(開始決定時に存在した)財産の管理に責任を負うことになります。

予納金

破産管財人に引き継ぐお金を引継予納金と呼んでいます。これは、破産管財人が業務を遂行するための予算であると同時に、破産管財人が受け取る報酬の原資となります。そのため、破産管財人の業務が通常より多かったり、困難と見込まれる場合には、予納金も高額になることがあります。

破産管財人

破産手続において、破産者の財産を調査・管理し、処分し、配当する作業を行い、免責に関する意見を裁判所に述べるなどする人です。ほとんど全ての破産手続で、弁護士が破産管財人に選任されています。破産管財人は、債権者の利益を確保したり、破産者が隠している資産を発見したりすることも業務に含まれるため、必ずしも、破産者の味方ではありません。しかし、公平・中立な立場で業務をしているため、警戒したり、敵対する必要はありません。むしろ、管財人の調査に協力することは、破産法上の義務となっています。

少額管財

昔は、個人の自己破産でも、50万円くらいの予納金が掛かりました。それでは破産申立てが使い難いということで、現在、多くの裁判所で、最低予納金は20万円程度になっています。これを、予納金が少額という意味で、少額管財と呼んでいます。

管財人口座

その破産事件専用の口座として「破産者〇〇〇〇破産管財人弁護士〇〇〇〇」という名義で口座が作られることがあり、これを破産管財人口座と呼んでいます。従前は、全ての破産事件で、破産事件専用の口座を作ることが行われていましたが、最近は、金融機関が1万円以上の手数料を要求するようになったことから、あまり財産が多くない破産事件では、破産管財人弁護士が普段から使用している預り金口座を使用することもあります。

同時廃止

破産管財人を選任せずに手続を進める場合を同時廃止と呼んでいます。破産手続開始決定と同時に、手続が廃止されるという意味です。破産管財人に支払う予納金が必要ないため、少額管財より、費用負担が安くなります。同時廃止となるのは、破産管財人の仕事がない場合(資産がなく、換価、配当の見込みがない。借入原因が明確で、免責不許可事由がないなど、免責調査の必要がない。)です。ただし、管財人を選任するかは、裁判所の専権事項であり、破産者に選択権はありません。過去には、破産管財人候補者(弁護士人口)が少なく、破産申立件数が多かった時代、現実的な処理能力の問題もあって、多くが同時廃止として処理された時代もあったようですが、現在では、むしろ、破産管財人を選任するのが破産法の原則であり、同時廃止は例外であるという考えが強くなっており、管財人選任率があがっています。

自由財産

破産手続によっても換価(処分)されない財産を自由財産と呼んでいます。法律が定める自由財産(法定自由財産)として、99万円までの現金、確定拠出年金などがあります。法定自由財産ではない財産であっても、自由財産の拡張制度があり、裁判所が破産者の経済的更正に必要不可欠であるとして認めれば、換価(処分)対象外となることがあります。

免責不許可事由

破産法が定める免責を不許可とする事由です。以下のような免責不許可事由が定められています(破産法252条1項)。

  • 財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分
  • 偏頗弁済
  • 浪費、賭博、その他の射幸行為(FX、仮想通貨など)
  • 詐術を用いた信用取引
  • 帳簿・書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと
  • 虚偽の債権者名簿の提出
  • 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと
  • 不正の手段により、破産管財人等の職務を妨害したこと
  • 過去の免責許可決定の確定から7年以内であること
裁量免責

免責不許可事由があっても、裁判所は、一切の事情を考慮して免責を許可して構わないとされています。これを裁量免責と呼んでいます。ギャンブル、浪費などの免責不許可事由があっても、破産管財人の調査に誠実に協力すれば、ほとんどの人は、裁量免責されているのが、実務の現状です。

破産詐欺罪

破産手続上、裁判所や破産管財人を騙して、免責を得ようとする行為は、破産詐欺罪として、処罰の対象となります。これを破産詐欺罪と呼んでいます。

  • 破産者の財産を隠匿したり、損壊する行為
  • 破産者の財産の譲渡や債務負担を仮装する行為
  • 破産者の財産の価格を減損する行為
  • 破産者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を負担する行為
債権者集会

債権者が、どれくらい配当されるのか、免責は許可されるのかなど、破産手続の報告を聴くために開かれる集会です。裁判所で行われます。ただし、個人の破産では、銀行、消費者金融、債権回収会社などの金融機関は、債権者集会に来ないことが大半です。その場合、債権者から質問が出たりすることもありませんので、破産管財人が事前に提出した報告書を確認するだけで、5分~10分程度で終了することが多いと言えます。

換価

債権者に配当するためには、破産者の財産をお金に換える必要があります。これを換価(かんか)と呼んでいます。

破産財団

債権者への配当の原資となる破産管財人が管理する財産の塊のことを破産財団と呼んでいます。破産管財人の仕事は、できるだけ配当を増やすために、破産財団の増殖を図ることです。

配当

破産者の財産を換価して形成された破産財団を、各債権者に、債権額に応じて、平等に分配することです。

免責許可決定

裁判所が破産者の債務の免責を許可するという決定です。個別の債権について免責するかどうかを決定するわけではなく、単に「免責を許可する」と決定するだけです。したがって、どの債権が非免責債権として残るかは、判断されません。

非免責債権

税金、罰金などは、免責許可決定が出ても、免責されません。婚姻費用、養育費も、免責の対象外となります。また、「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」も非免責債権とされています。

破産債権

破産手続によって配当に加入できる債権のことです。たとえば、養育費請求権は、非免責債権ですが、破産債権ではあるので、破産者に資産がある場合には、破産手続上、配当を受けることができます。

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