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裁判より示談の方が不貞の慰謝料は高くなる?

最近、不貞(不倫)慰謝料請求で、「裁判するより、示談した方が、慰謝料が高くなる(高くなりやすい)から、示談を勧める」という広告やネット記事を見かけました。

しかし、この広告は、弁護士から見ると、かなり違和感のあるものです。

確かに、裁判で判決をもらうと、裁判の相場通りにしかならず、示談の場合は、相場を超える金額で示談できることがあります。しかし、絶対にそうなるわけではなく、逆に、相場を下回る金額でしか示談できないこともあります。

つまり、①請求側が裁判を避けたい場合は、裁判相場より低い金額でも納得せざるを得ない、②請求された側が裁判を避けたい場合は、裁判相場より高い金額でも支払わざるを得ないということになります。相手が裁判でも構わないという姿勢を取る限り、譲歩しなければならないのは、裁判を避けたい側なのです。

また、示談は、相手が応じなければ成立しないものであり、たとえ、完璧な証拠があって、適正な金額を請求していても、相手方には、示談に応じる義務はありません。まして、相場を大きく超える金額を請求すれば、相手方が示談に応じない可能性は一層高くなるでしょう。

そもそも、示談と裁判は選択制ではなく、どの弁護士に依頼しても、通常は、①示談交渉→②訴訟提起の順番です。例外的に、相手が示談に応じないことが予め分かっている場合に限り、いきなり訴訟提起することもありますが、それほど多くありません。そして、交渉しても、相手が示談に応じない場合は、訴訟提起せざるを得ないのであって、その時点で、示談という選択肢は消えており、「訴訟だと相場通りしか認められないから、示談交渉を続けて欲しい」と言ってみても、相手が「裁判で良い」と言う限り、どうすることもできません。

おそらく、広告会社が「示談」を強調するのは、裁判例の相場通りだと、顧客に訴求する効果が弱いからでしょう。

確かに、相場を超える高額な示談が成立する事例がないわけではなく、私も経験はありますが、それは裁判を避けて示談を選んだからではないのです。

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