最近、Xで、離婚カウンセラーという人が、離婚調停は、自分でもできるとポストして、弁護士の間で話題になっていました。内容としては、概ね、次のとおりです。
- 離婚調停は、自分ひとりでもできる。
- 弁護士をつけない方がいいこともある。 調停は「話し合いの場」だから、調停委員が、一人で来て、きちんと話している人に、 共感が寄ることも少なくない。
- 最初から全部任せる必要はなく、まず弁護士に相談だけして、方向性を整理し、一度自分でやってみる。「難しい」「不利になりそう」と感じたら、 途中から弁護士に入ってもらえばいい。
これに対して、弁護士からの反論は次の通りです。
- 調停委員は、立場の弱い方に譲歩を迫る
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弁護士を付けないと、「調停委員に丸め込まれる」と指摘する声が複数ありました。声の大きい方、説得がしやすい方に譲歩を迫る調停委員の存在が指摘されています。
調停委員は、「公平」な立場ではありますが、「公平」とは、「自分の味方ではない」ことを意味します。そして、「話し合いの場」というのは、「法律に則っていなくても、当事者が合意していれば良い」ということでもあります。そのため、法的に譲歩する必要がない部分で、譲歩を迫られるということはあり得ます。調停委員が、説得しやすい方を説得しに来るということは、以前から、複数の弁護士が指摘しており、そういう側面があることは否定できないでしょう。
- 途中からでは手遅れ
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調停は「話し合いの場」なので、途中までの話し合いの流れをひっくり返す交渉は困難という指摘がありました。また、途中から受ける弁護士を見つけるのが困難であったり、最初から依頼する場合よりも、料金が高くなる可能性があるという声もあります。
弁護士によっては、途中からの依頼を受けない場合があります。また、依頼を受ける場合でも、通常料金より高くなる場合があります。それは、最初から関与するよりも、途中から関与する方が、それまでの流れを断ち切って、方向転換しなければならない側面があるだけ、難しいからです。
また、一度、自分でやってみようとした人は、当初は、弁護士の必要性を感じておらず、不利になりそうだから依頼しようと考えていることが多いと言えます。その結果、その「不利」な部分をひっくり返せなければ、依頼者満足度も下がり、「やはり依頼しないほうが良かった」ということになってしまう可能性が高いため、依頼自体を避けることもあります。 - 離婚事件は高度専門化が進んでいる
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現代の調停は、既に、「話し合いの場」ではなくなっており、離婚訴訟を見据えた、法的な争点の整理の場になっていて、当事者では対処が困難と指摘する声がありました。「離婚に長く関わっていないため、もう離婚事件を受けられる自信がない」(それだけ専門化が進んでいる)とポストした弁護士もいました。
確かに、離婚調停は、慰謝料、婚姻費用、養育費、財産分与については、かなり細かいお金の問題となるため、正確に計算するだけでも一苦労です。また、収入隠しや財産隠し、不動産の明渡し、家具・家電等の動産の分配、子の引渡し、面会交流など、協議事項が多岐にわたる場合、単純に、相応の事務処理能力が必要となります。
弁護士をつけない最大のメリットは、弁護士費用が節約できることです。弁護士報酬は自由化されているため、法律事務所によって異なりますが、着手金だけで、安くても、20万円~40万円程度はかかることが多く、報酬を合わせると、50万円~100万円以上になることがあります。お金の問題が少なく、費用対効果が合わない場合は、弁護士を付けないというのも、合理的な選択肢だと思います。
特に、争点が少ない場合、例えば、養育費だけとか、離婚するかどうかだけが争点の場合は、必ずしも、弁護士をつける必要性はないかもしれません。
しかし、「話し合いだから弁護士が不要」というのは、むしろ、逆ではないかと思っています。話し合いのためには、法的な結論を知っていることが非常に有効だからです。
たとえば、算定表上の養育費の額が3万円のところ、3万5000円であれば、交渉の余地はあると思います。しかし、6万円とか7万円だとどうでしょうか?そこまで大きく外れた金額では、交渉の余地は全くないと思われ、話し合いにならないこともありえます。算定表上3万円であるという知識は、話し合いにおいて、非常に重要です。
もっとも、養育費であれば、算定表が公表されているので、自分で調べることもできますし、裁判所に聞くこともできるでしょう。
しかし、それ以外はどうでしょうか。相手の提案が、法的に根拠のあるものなのか、根拠のないものなのか、弁護士がいなければ分からないことが多いと言えます。調停委員は、一方の主張に対して、「法的根拠がない」と明言してくれることは、ほとんどありません。調停は「話し合い」なので、法的根拠がなくても、主張することが可能であり、相手の主張を拒否してよいのか、応じたほうが良いのかは、法律知識がなければ、判断が難しいと言えます。
統計上、離婚調停で、どちらか一方に弁護士がついている割合は6割程度です。相当割合で、どちらかに弁護士が就任しており、弁護士に依頼することが、それなりに一般化しつつあると言える状況です。私としては、予算が合えば、弁護士に依頼して進めることをお勧めします。
