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浮気した側(有責配偶者)からでも離婚できる?判例から見る判断基準と認容のポイント

「自分から浮気をしておきながら離婚を請求するなんて認められない」ー実務的にも、婚姻関係を破綻させた原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求は、原則として裁判では認められません。

しかし、一定の要件を満たす場合には、例外的に裁判で離婚が認められるケースがあります。

本記事では、有責配偶者からの離婚請求がどのような条件で認められるのか、その争点と判断のポイントを詳しく解説します。

目次

1. 原則と例外:有責配偶者からの離婚請求が認められる条件

相手方が離婚に同意しない場合、裁判所は民法770条の離婚原因(「婚姻を継続し難い重大な事由」など)の有無を判断します。

不貞行為(浮気)を行った側からの離婚請求は、本来「自ら破綻させた責任を棚上げにするもの」として、信義誠実の原則(信義則)上許されないとされています。ただし、最高裁の判例に基づき、以下の3つの要件を満たす場合には例外的に離婚が認められます。

  1. 同居期間や年齢に比して、別居期間が相当長期であること
  2. 当事者間に未成熟子がいない、または未成熟子がいてもその福祉が害されていないこと
  3. 相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況に置かれないこと

2.東京高裁平成26年6月12日判決(判例時報2237号47頁)

1. 事案の概要

  • 当事者:妻(控訴人・フランス国籍)/ 夫(被控訴人・日本国籍)
  • 子:長男(当時6歳)、長女(当時4歳)
  • 婚姻・別居:平成17年に婚姻。平成24年5月に妻が子どもを連れて家を出て別居開始(判決時点での別居期間は約2年)。
  • 本件の経緯: 不貞行為(別の男性との交際)を行った妻から、夫に対して離婚、親権指定、養育費等を求めて提訴。
  • 第1審(原審:横浜家裁): 別居期間が約1年半と短く修復可能であること、仮に破綻していても主な原因は妻の不貞(有責配偶者からの請求)であり信義則に反するとして、妻の離婚請求を棄却。妻が控訴。

2. 判決の結論(東京高裁)

原判決を取り消し、妻からの離婚請求および親権・養育費の申立てを認容。

  • 離婚:認容(離婚を認める)
  • 親権:2人の子(長男・長女)の親権者をいずれも妻(母親)と定める
  • 養育費:夫から妻へ、子ども1人あたり月額6万円(計12万円)を支払う

3. 主な争点と裁判所の判断理由

① 婚姻関係の破綻(民法770条1項5号)の有無

  • 判断:破綻を認定。
  • 事前に夫側がクレジットカードの利用停止や携帯・メールの遮断などの実力行使を行い「出て行け」と迫ったことで夫婦の信頼関係が急速に悪化したこと、別居後に警察が介入するようなトラブルが発生したこと、双方とも関係修復のための具体的な行動をとっていないことなどから、遅くとも平成24年9月頃には婚姻関係が決定的に破綻していたと認定しました。

② 有責配偶者からの離婚請求と信義則(最高裁昭和62年判決の枠組み)

  • 判断:有責配偶者からの請求ではあるが、信義則に反せず認容される。
  • 妻が不貞行為に及んだことが破綻の直接的要因ではあるものの、以下の事情を総合的に考慮し、離婚を認めても著しく社会正義に反する結果とは言えないと判断しました。
  1. 夫側の落ち度:妻に不貞行為があったとはいえ、最初に離婚を切り出したのは夫側であり、夫が実力行使(カードや連絡手段の切断)で妻を追い詰めたことも関係悪化の要因であり、破綻の責任の一端は夫にもあること。
  2. 相手方(夫)の状況:夫は高収入(年収約961万円)であり、離婚によって経済的・精神的に著しく過酷な状況に立ち至るわけではないこと。
  3. 未成熟子の福祉:妻が働きながら2人の子どもを適切に養育監護しており、離婚によって子どもの福祉が殊更害される状況にはないこと。

③ 親権および養育費

  • 親権:これまで主として妻が監護を行ってきた実績、現在の養育状況に問題がないこと、子どもが幼く母親を必要としていること、夫は仕事で多忙であることなどを考慮し、妻を親権者と指定。
  • 養育費:双方の年収(妻:給与相当約72万円/夫:約961万円)を考慮し、算定表に基づき1人あたり月6万円(計月12万円)と認定。

4. 本判決の実務上の意義

最高裁の判例では、有責配偶者からの離婚請求が認められるためには通常「相当長期の別居」や「未成熟子がいないこと」が要件とされますが、本判決は「別居期間が約2年と短く、幼い未成熟子がいる事案」であっても、夫側の過失態様や経済的状況、子どもの養育環境などを総合的に評価し、信義則違反にあたらないとして例外的に離婚を認めた重要な裁判例です。

その際、以下のように、有責配偶者からの離婚請求全般に関する重要な考え方も示されています。

これまでそのような有責配偶者からの離婚請求が否定されてきた実質的な理由の一つには、一家の収入を支えている夫が、妻以外の女性と不倫や不貞の関係に及んで別居状態となり、そのような身勝手な夫からの離婚請求をそのまま認めてしまうことは、残された妻子が安定的な収入を断たれて経済的に不安定な状態に追い込まれてしまい、著しく社会正義に反する結果となるため、そのような事態を回避するという目的があったものと解されるから、仮に、形式的には有責配偶者からの離婚請求であっても、実質的にそのような著しく社会正義に反するような結果がもたらされる場合でなければ、その離婚請求をどうしても否定しなければならないものではないというべきである。

婚姻制度は男女平等ではあるのですが、離婚の判例は、妻子を保護する観点から様々な理論を構築してきた側面もあり、立場を逆にしたときに、そのまま当てはめるのが適切ではない場合もあるということです。

3. まとめ:有責配偶者からの離婚請求を成功・防衛するための実務の着眼点

立場実務上のポイント・対策
離婚を請求したい側
(有責配偶者)
・単に時間を経過させるだけでなく、別居の実績を明確にする。
・子どもと同居している場合、監護状況を極めて安定させる。
・相手方の落ち度を指摘し、有責とはいえ、一方的に自分が悪いわけではないことを主張する。
離婚を拒否したい側
(相手方)
・単に「浮気されたから離婚しない」と主張するだけでは不十分な場合がある。
・離婚によってどれだけ精神的・経済的に過酷な状態に陥るかを具体的に立証する。
・自分から離婚を切り出したことがある場合、考えが変わった理由を主張立証する。

有責配偶者からの離婚トラブルは専門家にご相談を

自身に不貞行為などの落ち度がある場合、相手方との直接交渉で離婚を成立させることは極めて困難です。また、裁判においても、別居期間の長さだけでなく、子どもの養育状況や夫婦共有財産の処理など、多角的な立証が必要となります。

「自分に落ち度があるが離婚を進めたい」「相手の勝手な不倫による離婚請求を阻止したい・条件を有利にしたい」とお悩みの方は、早い段階で離婚問題に詳しい弁護士へご相談ください。

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