離婚後、養育費が支払われるか、不安に思う人は珍しくありません。将来分の養育費を一括で受け取っておけば、未払いのリスクもなく、安心です。
一括払いも、当事者間で合意すれば有効ですが、現実には、月払いが原則です。義務者側が一括払いを拒否すれば、ほとんどの場合、それ以上の交渉の余地はなく、月払いにしかなりません。裁判所も、義務者が一括払いを拒否した時点で、それ以上は、一括払いを検討することはなく、月払いを当然の前提として調停を進行するでしょう。
養育費の一括払いには、次のような問題があると言われています。
- 支払い能力
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月3万円の養育費を20歳まで支払うとすると、総額720万円になります(中間利息を控除しない場合)。たとえば、これが子ども2人分になると、1440万円にもなります。義務者側に一括で支払う資力がなければ、一括払いはできません。一括払いには、支払い能力という決定的な問題があるケースが多く、不可能なことが多いのです。
- 途中で使い果たしてしまうリスク
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養育費を浪費するなどして、途中で使い果たした場合、追加請求できるかという問題があります。裁判所は、原則的には、追加請求を認めていません。
しかし、義務者側からすれば、追加請求調停などに対応する労力が必要になりますし、困窮している子どもを感情的に見捨てられず、追加支払いを余儀なくされる場合もあります。更に、子自身には、養育費を使い果たした責任がないため、子からの扶養請求があった場合には、支払わなければならないという見解もあり、事実上、追加払いが必要になるリスクもあります。
- 中間利息控除
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養育費は、子どもを日々養育するためのものですから、将来養育する費用は、本来的には、将来に発生するものです。それを前もって一括で受領する場合、中間利息を控除するとされています。借りたお金に利息がかかるのと同じです。したがって、一括払いの場合、実際に受け取る金額は、(中間利息を控除しない合意をすれば別ですが)月払いよりも安くなります。
しかし、本来よりも安い金額になると、使い果たすリスクも高くなります。かといって、投資で運用したりすると、目減りするリスクが出てしまいますし、やはり、それは養育費の在り方として望ましくないと言えるでしょう。
- 贈与税
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養育費を一括払いで受け取ると贈与税がかかる場合があるとされています。
一括払いは、子どもが既に高校生以上の場合など、養育費の支払期間が短い場合には、問題が少ないと思います。しかし、そのような場合であっても、月払いが原則であることに変わりはなく、義務者が拒否すれば、それ以上の交渉は不可能であることが多いと思います。