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口外禁止条項について

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口外禁止条項は和解(示談)では広く使用されている

和解の内容、あるいは、紛争があったこと自体を第三者に知られたくないということで、和解(示談)の際、口外禁止条項(秘匿条項)を入れることがあります。これは、実務では、広く行われています。

加害者のみならず、たとえば、性犯罪のような事案では、被害者が希望する場合もあります。また、労働事件では、他の従業員に波及することを審判して、使用者(会社)側が求める例もあります。

ただし、口外禁止条項の提案は、「口封じ」という印象を持たれる可能性があるため、提案する場合は、事案の内容、相手方の属性に応じて、時期や提案の仕方など、慎重に検討する必要があります。

世間の耳目を集めるような事件では、“加害者が「口封じ」を求めた”といった報道がなされた例もあります。また、そのような事案でなくても、特に、被害者的立場にある側の感情的反発を招くことがあり、和解の妨げになるケースもあります。

特に、弁護士を立てずに、当事者同士で示談交渉をする場合、相手方に悪印象を持たれる例が散見されます。やはり、弁護士が提案するのと、本人(又はその家族など)が提案するのとでは、相手方の受ける印象が異なるのではないかと思われます。

実際の効果は限定的であることに注意

口外禁止条項を入れても、その違反に対して、損害賠償請求等の法的手段をとることは、事実上、かなりの困難を伴います。なぜなら、第三者に口外したことを証明しなければならないからです。

第三者に伝わったことを証明しただけでは足りないという点に注意が必要です。それを相手方が口外したものだということを証明する必要があります。しかも、口外禁止条項の約束をした後に口外している必要があります。しかし、そのような証明が可能なケースは、相当限定的と思われます。

また、そもそも、社会的評価を低下させたり(名誉毀損)、プライバシーを侵害する行為は、事実の公共性、目的の公益性などがない限り、不法行為と評価されるため、口外禁止条項などなくても、常に、自由に、口外できるというわけではないのです。その意味では、事案の内容によっては、口外禁止条項がなくても、法的には、口外できる範囲は、さほど変わらないということもあり得ます。

また、口外禁止条項を設ける場合でも、およそ一切の第三者に口外してはならないというのは、非現実的です。たとえば、当事者が、第三者に相談しながら訴訟を進めてきた場合や、裁判の支援者等がいる場合には、こうした人たちに顚末を報告せざるを得ないでしょうし、家族にも秘密というのは、現実的ではありません。

そのため、口外禁止条項を設ける場合には、「正当な理由なく口外しない」という文言にするのが、一般的です。「正当な理由」には、たとえば、①裁判の当事者ではないが、事件自体には関係するような人、②家族など、常識的に考えて、話さざるを得ないような人が含まれます。

また、「正当な理由」には、自己が権利行使する場合も含まれます。たとえば、不貞の慰謝料を支払った後、不貞相手に求償する(負担を求める)場合には、支払ったことを説明せざるを得ないでしょうから、「正当な理由」に含まれるでしょう。

「正当な理由」が、どこまでの範囲を含むのか、当事者双方に認識の相違があると、トラブルの原因になるため、「とりあえず入れておけば良い」というのではなく、その意味をよく考えて、話し合いをする必要があります。

口外禁止条項を拒否されたら?

口外禁止条項を拒否された場合、相手方に、その理由を問う必要があります。具体的な誰かに話したい事情がある場合には、口外禁止条項を付けても、「正当な理由」で除外されるとか、その人だけ除外する条項を設けるなどの交渉が考えられます。

他方、特に、理由を回答せず、「とにかく口外禁止条項は嫌だと言う人もいます。この場合、「口外する」、「言いふらす」と宣言しているようなものですから、当事者としては、かなり不安にならざるを得ません。

しかし、もともと、口外禁止条項は、当事者同士で合意が成立しなければ付すことはできません。裁判所の判決では、付されないのです。したがって、相手方が拒否する以上は、基本的には、仕方がないと言えます。しかも、口外禁止条項がなくても、名誉毀損、プライバシー侵害行為が当然に許容されるわけではないため、心配であれば、書面で、そのような警告をしておくことも考えられます。

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