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書面の提出期限~裁判との向き合い方~

初めて民事訴訟の当事者となった方が疑問に思われる点として、準備書面の提出期限があります。相手が準備書面の提出期限を守らないことがあり、「こんなことが許されるのか?」と憤られる方も珍しくありません。場合によっては、訴訟を遅延させる「戦術」ではないかと疑う方もいます。

実際は、「期限が守られないのが普通」とまでは言えませんが、民事訴訟では、良くある事態なのです。

準備書面は、「これに記載した事項について相手方が準備をするのに必要な期間をおいて、裁判所に提出しなければならない。」(民事訴訟規則79条1項)とされています。実務上は、裁判所が、次回期日の一週間くらい前に期限を指定(民事訴訟法162条1項)します。※もちろん、訴訟の進行によっては、それより前に指定されることもあります。

ところが、これに違反したことに対する罰則・制裁は、基本的にありません。

一応、「当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。」(民事訴訟法157条1項)とされています。そして、指定された期間を経過した後の提出は、時機に後れたものとされる可能性があります。

しかし、この規定により却下するためには、故意又は重大な過失、訴訟の完結を遅延させるという要件も必要です。特に、「訴訟の完結を遅延させる」という点は、新たな証拠調べを要しない主張の追加や、直ちに取調べが可能な証拠の申出は、訴訟の完結を遅延させるものに該当しないとされています。

実際上、あまり厳格に運用されているとは言い難く、提出期限に遅れても、そのまま進行するのが通常です。

このたび、民事訴訟法が改正され、裁判長が準備書面の提出等の期間を定めた場合、その期間経過後に準備書面の提出等をする当事者において、裁判所に対し、その期間を遵守できなかった理由に係る説明義務を負う旨の規定が創設されました(改正民事訴訟法162条2項)。これまでも、当事者が、書面提出期限に間に合わなかった場合、裁判官が説明を求めたりはしていましたが、明確に「説明義務」として創設したものになります。

これにより、期限に間に合わなければ、その理由を説明しなければならず、当事者及び弁護士は、期限を守ろうとするでしょうから、緊張感を持った訴訟活動が期待されます。

しかし、逆に言えば、説明義務を創設しただけであり、それ以外は、いままでと変わらないので、合理的な理由が説明されれば、問題視されないでしょうし、それが「体調不良で準備が間に合わなかった」のような確認しようがないことであっても、一応、説明したということにはなるでしょう。

民事訴訟の当事者の方は、現在の運用が、このようなものであるということを理解したうえで、向き合う必要があります。

誤解してほしくないのですが、今までも、期限を遵守する弁護士は、毎回、きっちり遵守しています。ところが、相手方ばかりが、毎回、期限を徒過すると、不公平感の原因になり、当事者にとって相当のストレスです。弁護士や裁判所は、これについて問題意識を持っていないわけではなく、だからこそ、説明義務が創設されたわけです。

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