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債務不存在確認訴訟とは

目次

債務不存在確認訴訟とは

 債務不存在確認訴訟は、文字通り「債務が存在しないことの確認を求める訴訟」です。

 現在の民事訴訟の圧倒的多数は、いわゆる給付訴訟と呼ばれるもので、請求する側が「○○円を支払え」と訴えるものです。

 他方、債務不存在確認訴訟は、請求されている側が、「支払義務がない」ことの確認を求めて、訴えを起こすことになります。支払義務が全くない場合のほか、「○○円までは支払義務はあるけど、○○円を超えては支払義務がない」という内容で提起することも可能です。

 よく使用されているのは、交通事故において損害保険会社が、示談交渉が膠着状態に陥った時に、裁判による解決を求めて債務存在確認訴訟を提起する場合があります。損害保険会社としては、被害者が裁判を起こすわけでもなく、いつでも示談に納得しないという状況が続けば、いつまでも問題も解決しないので、保険会社側から、いくら払えばいいのか裁判所に決めてもらうという目的で、提訴するわけです。

 このように、債務不存在確認訴訟は、支払義務はあるものの、金額に折合いが付かず、請求側が、いつまでも裁判を起こさない場合に、民事訴訟による解決を強制する目的で使用することが可能です。

  また、例えば、裁判を起こす起こすと言いながら、いつまでも裁判を起こさず、金銭を要求し続けるクレーマーに対して、債務不存在確認訴訟を使用することも可能です。相手方が、裁判を起こさず、書面や電話で金銭の請求を繰り返して、ストレスになっている場合には、強制的に裁判に乗せてしまい、交渉を拒絶することが可能になります。

 逆に、金銭を請求する側としては、自分が裁判を起こさない限り、いつまでも裁判にならないと思ってはいけません。請求された相手方には、債務不存在確認訴訟を提起する選択肢があるからです。

債務不存在確認訴訟に対する反訴

 債務存在確認訴訟を提起されると、金銭を請求する側は、通常、「○○円を支払え」という反訴せざるを得ません。なぜなら、債務不存在確認訴訟は、債務が存在するか、しないかを確認するだけのもので、強制執行をすることができないからです。せっかく、裁判に対応して、支払義務が認められても、強制執行できないのでは、相手方が任意に支払ってくれない限り、もう一回、裁判をせざるを得なくなるため、「○○円を支払え」という判決を取っておく必要があるわけです。

相手方が請求していない債務の不存在確認

 通常は、相手方が何も請求していない状態では、債務不存在確認訴訟は許されません。たとえば、全く見ず知らずの第三者に対して、突然、「○○円の支払義務がないことの確認を求める」という債務不存在確認訴訟を起こしても、裁判所は、「○○円の支払義務がない」という判決ではなく、訴えを却下(内容を審理せず門前払いすること)します。「訴えの利益」と呼ばれる訴訟要件(訴訟を成立させるための要件)が存在しないからです。何の紛争もないのに、イタズラ的に裁判を起こすことはできないということですね。

 ただし、訴訟になっている当事者間において、請求されていない債務の不存在確認を求めることはあります。

 たとえば、婚約破棄に伴い、裁判では、「慰謝料の請求」しか求められなかった場合、仮に、裁判に勝って、慰謝料の請求が棄却されたとしても、「婚約指輪はどうするの?」という問題が残ってしまいます。もしかすると、相手方は、慰謝料は払ってほしいけど、婚約指輪は返さなくてよいと考えていたのかもしれませんが、そんなことは、請求された側からは分からないこともありますし、後から気が変わって、婚約指輪の返還も求められるかもしれません。

 そこで、現時点では、婚約指輪の返還を求められていなかったとしても、後々、婚約指輪の件が問題になるのを避けるため、予め、指輪の返還義務がないことも、慰謝料と同時に判断してもらうため、指輪の返還義務がないことの確認訴訟を反訴として提起することが可能です。

デメリット

感情的反発

 債務不存在確認訴訟は、先制攻撃的機能があるため、請求側が感情的に反発する可能性があります。債務不存在確認訴訟という制度は、あまり一般に知られていませんし、金銭を請求する側は、通常、「裁判を起こすかどうかを決めるのは自分」だと思っています。ところが、ある日、金銭を請求された側から、裁判を起こされたとなると、感情的に、不快だと感じる可能性があります。

 特に、企業の場合は、レピュテーションを考慮しなければなりませんし、不法行為の加害者の場合は、被害者が、裁判上の和解に応じにくくなるなどのリスクを考慮しておく必要があります。

やぶ蛇

 一般に、債務不存在確認訴訟を検討するのは、相手方から金銭の請求を受けているにもかかわらず、金額が折り合わず、かといって、相手方が、いつまでも裁判を起こさず、膠着状態に陥った場合です。

 しかし、この状態に陥ると、「相手方は、最終的には、諦めるのではないか」という考えも、頭をよぎります。確かに、弁護士に依頼するにはお金がかかりますし、裁判には時間と労力がかかりますので、交渉が膠着状態に陥っているにもかかわらず、請求側が裁判を起こさない場合、放っておくと、諦める可能性があります。いずれは、消滅時効が完成し、支払義務に関わらず、時効消滅することになるでしょう。

 金銭を請求された者は、支払わなくてよいなら、支払いたくないと考えるでしょう。しかし、債務不存在確認訴訟を提起すると、支払義務がある場合には、支払義務が裁判で確認されてしまうことになります。いわゆる「やぶ蛇」の事態です。

 債務不存在確認訴訟を使用するのは、「相手方が諦める」という可能性を自ら放棄することになります。相手方が諦める可能性が全くない場合(いずれは裁判を起こす可能性が高い場合)、もしくは、時効を待たず、早く解決したい場合に限られるでしょう。

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