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法テラス制度の持続可能性と「弁護士探し」で気をつけるべきポイント

法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕がない方でも弁護士による法律相談や費用の立替制度(民事法律扶助)を利用できるようにするための公的インフラです。しかし近年、法テラスの「担い手」である弁護士の契約率低下や地域差が顕著になり、制度の持続可能性います。

本記事では、公的資料の統計データに加え、SNS(X/旧Twitter)等で発信されている弁護士のリアルな本音や実務上の課題を交えながら、制度の現状や原因分析、そして弁護士を探している方が留意すべきポイントについて解説します。

目次

1. データと実態から見る法テラス制度の持続可能性と危機

法テラスと民事法律扶助契約を結ぶ全弁護士数は約2万4,000人規模で横ばいに推移しており、一見すると受け皿は維持されているように見えます。しかし、数値の裏側にある実態や地域別・世代別のデータを見ると、深刻な実態が浮かび上がります。

  • 若手弁護士の契約率が大幅に低下
    司法修習期ごとの契約率を見ると、かつて(65期など)は民事法律扶助の契約割合が6割を超えていましたが、直近の77期(令和7年登録)では全国で15.1%まで低下しています。特に東京三会(東京・第一東京・第二東京)においては、77期の民事法律扶助契約率がわずか3.9%にとどまっています。
  • 「名ばかり契約(実質不受任)」弁護士の存在
    統計上の契約弁護士数(約2万4,000人)には、「過去に締結した契約を更新し続けているものの、現在は新規の法テラス案件を断っている」「繁忙や採算性を理由に受任を休止している」という弁護士が相当数含まれています。X(旧Twitter)上でも「契約は残してあるが、実務上は法テラスでの受任をストップしている」とか「特殊な事情がある場合に法テラスで受けることがあるから契約を残しているだけで、原則的には受任していない」という発言は多く、名簿上の数字と「実際に依頼を引き受けられる弁護士数」には大きな乖離が存在すると思われます。
  • 都市部への集中と地方の偏在
    全弁護士の50%が東京都内に集中し、上位5都府県で全体の73%を占めています。一方で、年間の新規登録弁護士が0人または1人という弁護士会が存在し、地方での弁護士不足・高齢化が進行しています。
  • 特定弁護士への負担集中
    民事法律扶助契約を結んでいる弁護士の多くは年間1〜4件の受任にとどまりますが、小規模な弁護士会(函館や秋田など)では1人の弁護士が10〜19件以上を受任する割合が高いなど、地域によっては特定の弁護士に負担が集中しています。

2. なぜ「弁護士の法テラス離れ・実質不受任」が起きるのか?

弁護士が法テラス案件を敬遠したり、実質的に受任を控えたりする背景には、報酬水準や手続き負担の問題に加え、事務所経営や既存顧客への影響に関する重大な問題意識が存在します。

① 既存顧客との「二重価格(ダブルスタンダード)」の問題性

同じ「離婚」や「破産」といった法律トラブルであっても、通常料金で依頼する顧客と法テラスを利用する顧客とでは、弁護士が受け取る報酬額に2倍から3倍以上の大きな開きが生じます。

現場の弁護士業界からは、この「二重価格」に対して以下のような懸念が示されています

  • 不公平感の発生:正規の弁護士費用を工面して支払っている既存顧客に対して「なぜ同じ労力をかける業務で極端な価格差が生じるのか」という弁護士側の申し訳なさや不公平感が生まれる。
  • 価格設定の矛盾:事務所が適正な報酬基準を設定しているにもかかわらず、公的制度だからといって、極端に低い基準で受任し続けることは、事務所の提供価値や価格体系そのものを揺るがしかねない。

弁護士業界では、かつて、困っている人の依頼を安く受けることが美徳のように扱われる風潮がありました。しかし、市場競争が進んだ結果、ボランティア的な倫理観ではなく、事業者としての倫理を説く者が多くなり、二重価格は顧客に対して倫理的でないと考える者も珍しくなくなったのです。競争が進んだにもかかわらず、安い仕事を敬遠する弁護士が多くなった理由と言えるでしょう。

② 既存顧客に対する「サービス品質低下」の懸念

法テラス案件は、通常の案件に比べて報酬が低いだけでなく、資力確認のための証明書類収集や審査手続きなど、弁護士・事務員にかかる手続き上の負担が非常に重いのが特徴です。

限られた事務所のリソース(時間・人員)が手間の多い法テラス案件に圧迫されると、正規の費用を支払って依頼している既存顧客へのタイムリーな連絡や書面作成など、「既存顧客に対する本来のサービス品質が低下してしまう」という実務上のリスクが発生します。事務所全体のサービスレベルを維持するために、法テラス案件の受任数を制限せざるを得ないのが現場の実状です。

また、依頼者に援助するのは法テラスであるにもかかわらず、現場の弁護士に事務作業を丸投げしているという批判も古くからなされています。このような理不尽さも弁護士を遠ざける原因と言えるでしょう。

③ 報酬水準と手続き負担の不均衡

日弁連の調査でも、解約・不受任の理由として「報酬が低い」「手続が煩雑である」「処理困難な事件が多い」が上位に挙がっています。 X上の弁護士アカウントでも、「何十時間も打合せや裁判期日に費やすと時給換算で数百円レベルになり、事務所の固定費(家賃・人件費・データベース利用料等)を考慮すると善意だけでは維持できない」という切実な声が目立ちます。

④ キャリア選択の多様化

大手法律事務所所属の弁護士数は2025年に4,221人(全弁護士の約9%)、企業内弁護士(インハウス)は2026年に3,756人に達し、自治体で働く弁護士も増加しています。法テラス常勤弁護士への応募数が令和7年に35人まで減少していることからも、一般個人向けの民事事件を扱う若手弁護士自体が減っている実態が窺えます。

3. 弁護士を探している人が気を付けるべきポイント

法テラスの実質的な受任抑制や二重価格などの構造的問題を踏まえ、スムーズに弁護士を探し、適切な法律支援を受けるためのポイントをまとめました。

1. 契約の有無だけでなく「法テラスで受任可能か」を確認する

法テラスのウェブサイトや弁護士名簿に名前が載っていても、実際には新規受任を停止している「名ばかり契約」のケースがあります。問い合わせ時には、単に「法テラスと契約していますか?」ではなく、「現在、法テラスを通じた無料相談や案件受任に対応可能ですか?」と明確に確認することが重要です。

弁護士によっては、「破産」では法テラスを利用できるが、「離婚」では利用できないなど、事件類型によって使い分けているケースもあります。また、「破産」では法テラスを利用できるが、「手間のかかる破産」については法テラスの価格ではできないというケースもあります。なかなか見つからない場合でも、色々な弁護士に何度でも問い合わせてみるという方法が現実的です。

2. 「二重価格」の構造を理解し、適切な費用説明を受ける

弁護士側にとっても、正規料金の顧客と法テラス利用の顧客との間で価格設定上の課題が存在します。相談時には、法テラスを利用した場合の自己負担額(実費や毎月の返済額)や、事務所の通常料金との違いについて納得がいくまで明確な説明を受けましょう。

3. 必要書類(資力証明)の準備に積極的に協力する

法テラスの利用には資力要件の審査があり、住民票や課税証明書などの書類提出が必要です。弁護士側の手続き負担を減らし、事件の着手を早めるためにも、指定された書類は速やかに準備して提出する協力姿勢が求められます。

弁護士側からは、法テラスの顧客層の悪さ(資料を持ってこない、約束を破るなど)を指摘する声もあり、手間がかかると思われてしまうと、理由を付けて断られるリスクがあります。

4. 個別事務所で断られた場合は「法テラスの直営窓口」や「弁護士会」を頼る

個別の法律事務所に直接問い合わせて「現在は法テラス案件を扱っていない」と断られた場合でも、法テラスの地方事務所(法テラス福岡など)や地元の弁護士会法律相談センターに直接申し込むことで、現在受任可能な契約弁護士の法律相談を受けられます。

ただ、最近は、相談者の方から、法テラスの予約が取りづらいという声を聞くことも珍しくありません。そのため、依頼まで時間を要するのが難点です。

また、法テラスや弁護士会の相談は、当番の弁護士が交代で担当していることから、必ずしも、その事件に詳しい弁護士が担当してくれるとは限りません。事件内容によっては、依頼を受けられないことも珍しくありません。

5. 相性や方針に納得できない場合は無理をしない

法律トラブルの解決には信頼関係が不可欠です。万が一、事件の見通しや方針について弁護士と大きな溝がある場合は無理に受任を頼むのではなく、別の相談窓口でセカンドオピニオンを求めることも選択肢の一つです。

6.法テラスを使わないことも検討する

事案によっては、法テラスを利用して弁護士に依頼することを断念する方が合理的な場合もあります。

弁護士の中には、クレームや評判を気にして、なぜ受任できないのか正直に話してくれない人もいます。繁忙や取扱い経験がないことを理由に断られたとしても、実際は、事件の難易度に対して法テラスの報酬が安すぎるのが決定的な理由の場合も考えられます。そのような場合には、ご親族等から援助を受けて、正規の弁護士費用を賄うことも検討せざるを得ないでしょう。

法テラスは市民の権利を守る重要な公的制度ですが、現場では価格設定の乖離やリソースの過圧迫といった持続可能性への課題を抱えています。

当事務所でも、現在、特殊な事例に対応するためだけに法テラスとの契約を残していますが、原則的には法テラスによる受任はしていません。

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