不貞(不倫)慰謝料

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請求側・請求された側の両方に対応しています

不貞慰謝料は、請求する側・請求された側の両方に対応しています。

弁護士としては、請求された側の経験数の方が多く、減額交渉に圧倒的な強みがあります。

不貞慰謝料関係の裁判例、法律書籍を収集しており、最新の知見を持って対応させていただきます。

不貞慰謝料Q&A

不貞慰謝料の相場はどれくらいですか?

事案によって異なりますが、50万円~300万円の範囲です。平成27年10月から平成28年9月までの1年間に東京地裁で言い渡された認容判決95件を分析した論文では、多い順に、①150万円~199万円、②100万円~149万円、③200万円~249万円、④50万円~99万円となっており、中央値は150万円と分析されています(家庭の法と裁判No10・37頁・不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(1)・弁護士大塚正之)。

しかし、慰謝料の相場は、あくまで参考値に過ぎず、私が経験した事件でも、裁判所の判決で、300万円や400万円が認められたこともあります。慰謝料は、あくまで、個々の事案に応じた裁判官の裁量的判断事項ですから、必ずしも、相場通りになるとは限りません。

離婚の有無によって慰謝料額は変わるのでしょうか?

不貞(不倫)があったからといって離婚するとは限らないので、離婚は不貞(不倫)と相当因果関係のある損害ではないという最高裁判決があります(最判平成31年2月19日・民集73巻2号187頁)。これを前提とすれば、離婚は不貞(不倫)の損害ではないので、離婚の有無によって、慰謝料額は変わらないという考え方もできそうです。

しかし、離婚を慰謝料増額の一事情として考慮することは可能という見解(法律のひろば・令和1年7月号・54頁,判例タイムズ1461号・28頁)もあります。離婚自体を損害として認めないにしても、離婚に至ったということは、不貞(不倫)による精神的苦痛が大きかったことが推測できるという考え方です。

離婚しない場合の慰謝料は数十万円にとどまるケースも多いと明記する裁判例(東京地裁令和3年12月24日・ウエストロー2021WLJPCA12248042)も存在していることから、やはり、離婚の有無によって慰謝料額が変わる傾向にあると言って良いでしょう。

肉体関係がなければ慰謝料は認められないのですか?

不貞行為は、「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害する不法行為です。
したがって、肉体関係がなくても、婚姻共同生活の平和を害するような親密な関係を持つと、慰謝料が認めらます。たとえば、キスやハグ、親密なLINEのやり取りなども不法行為になり得ます。
ただし、肉体関係がないことは慰謝料の額に影響する可能性があります。

既婚者だと知らなかった場合は慰謝料は認められないのですか?

既婚者だと知らなかったことについて過失がなければ慰謝料を払う必要はありませんが、過失があれば支払う必要があります。

交際を開始するにあたり、相手が既婚者かを調査する一般的な義務はありませんので、気づく余地がなかった場合には、過失はありません。最近では、年齢だけで、結婚しているのが当然とは言えなくなっていますので、単に、30代なのに既婚者であることを疑わなかったのはおかしいといった理由で過失が認められることはないでしょう。

しかし、既婚者だと疑ってしかるべき事情があれば、調査義務が発生し、過失が認められます。交際途中に疑問が生じた場合も、きちんと確認せずに交際を続ければ、過失が認められます。

一般に、①交際期間が長いと過失が認められやすい(既婚者だと疑える機会が多いから)、②共通の知人が多いと過失が認められやすい(全員が既婚者だと知らないわけがなく、共通の知人を通じて、既婚者かもしれないと疑える機会が多いから)、③家族と住む家に行ったことがあると過失が認められやすい(家の中に家族の物が置かれており、結婚を疑うことができるから)と言えます。

逆に、①交際期間が短いと過失が認められ難い(既婚者だと疑える機会が少ないから)、②共通の知人がいないと過失が認められ難い(既婚者ということを知っている人から聞く機会がないから)、③一人暮らしの家(単身赴任中など)に行ったことがある場合には、過失が認められ難い(一人暮らしであることから、まさか既婚者だとは思わないから)と言われています。

私の経験上、過失がないのに、慰謝料を支払ってしまっているケースが多く見受けられます。既婚者だということを知らなかった場合には、必ず、弁護士に相談してください

婚姻関係が破綻していた場合は慰謝料は認められないのですか?

婚姻関係が破綻していた場合は、慰謝料の支払義務はありません(最高裁平成8年3月26日・民集50巻4号993頁)。しかし、「婚姻関係の破綻の有無は、永続的な精神的及び肉体的結合を目的としての共同生活を営む真摯な意思を夫婦の一方又は双方が確定的に喪失したか否か、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態となったか否かという観点から検討すべきものと解される。」(東京地裁平成29年11月7日)とされており、ほとんど離婚しているのに等しい状態でなければ認められず、少なくとも、別居していなければ破綻と認められないケースが多いと思われます。

不貞慰謝料の時効は何年ですか?

損害及び加害者を知った時から3年(民法724条1号)です。「損害を知った時」は、不貞の事実を知った時、「加害者を知った時」は、不貞相手に請求する場合は、不貞相手を突き止めたときです。時効が進行するには、慰謝料請求が可能な程度に知る必要があります。少なくとも、連絡先が全く分からなければ、慰謝料請求が可能とは言えないでしょう。

探偵費用の請求は認められますか?

探偵費用を含め、調査費用の賠償は、稀に認めている裁判例もありますが、事情に関係なく、認められない例が多いと言われています。民事訴訟では、証拠を収集するのは、当事者の責任だからです。最高裁調査官解説でも、基本的には認められない旨の記載があります(最高裁判所判例解説民事篇 平成31年度・令和元年度、135頁)。

なお、認められている少数の裁判例でも、一部が認められているに過ぎず、全額が認められている例は確認できません。

ラブホテルに入ったところの写真や動画は何回分あれば良いですか?

顔が写っていて、ラブホテルに入ったことが分かるなら、1回で十分です。確かに、不貞の回数は、慰謝料額を増額させる要素とされていますが、何十回も写真や動画を撮るのは現実的ではありませんし、調査費用の賠償が認められないことを考えれば、1回分で十分です。1回と2回~3回で、慰謝料額に大差が出るとは思えません。

無断録音や携帯の盗み見で入手した証拠でも使えますか?

日本の裁判所は、著しく反社会的な手段によって入手した証拠は認めないという立場を取っていますが、無断録音や携帯の盗み見程度では、これに該当せず、実際の訴訟でも問題なく証拠として認められています。ただし、ネットを通じて、IDとパスワードを入力し、不正ログインして入手した情報の場合、不正アクセス禁止法違反となり、証拠能力が否定される可能性もあります。

肉体関係を示唆するLINEの内容は証拠になりますか?

証拠になります。「ふざけて送っただけ」と言い訳する例もありますが、ほとんどの場合、そのような言い訳が認められることはありません。ただし、肉体関係を示唆するとまでは言えず、単に親密な関係や好意を示す内容の場合、その表現内容にもよります。

GPSは証拠になりますか?

ラブホテルや不貞相手の家付近に留まっていたことを示すGPSは、証拠として弱いと言わざるを得ません。GPSの精度には限界があり、必ずしも、GPSの場所に所在したとは限らないからです。また、GPSは設置場所によっては、違法収集証拠として排除されてしまう可能性があります。弁護士としても、違法な証拠として、裁判所への提出をお断りしなければならない場合があります。

慰謝料を支払った後、不貞相手に求償することはできますか?

法律上、不貞慰謝料は、不貞をした2人による連帯債務と解されており、1人が支払った場合には、不貞相手に求償することができます。しかし、法律上求償することができるからといって、不貞相手が素直に支払いに応じるとは限りません。場合によっては、①不貞の存在自体を否認する、②慰謝料額が高すぎるから一部しか負担したくない、③求償割合が50:50になるのは納得できないなどの理由で、支払に応じない可能性があります。

求償権は、支払った慰謝料の一部でしかないので、金額が少額になりがちです。たとえば、100万円の慰謝料を支払った場合、その半額だとすると、50万円しか請求できません。不貞相手が支払いを拒否した場合、弁護士に依頼して、求償訴訟まで起こすと、費用倒れになる可能性があります。したがって、慰謝料を支払う場合には、予め、求償が困難な可能性があることを考慮しておく必要があります。

不貞相手と別れる約束をさせることはできますか?

婚姻を継続する場合には、示談にあたり、配偶者と不貞相手が二度と接触しないように、接触禁止条項を付けるのが一般的です。

しかし、離婚する場合には、離婚後、配偶者と不貞相手が接触しても差し支えないはずであり、接触禁止条項を付けても、法律上、無効と評価される可能性があります。

不貞相手が接触禁止条項に違反しました。違約金を請求できますか?

接触したことを証明できれば、違約金を請求できます。

ただし、違約金の額が高額すぎる場合には、公序良俗違反(民法90条)により、請求できない場合があります。たとえば、接触禁止条項に違約金3000万円を定めても、裁判所が、実際に3000万円の認容判決を出す可能性はほとんどないと思われます。

不貞相手に仕事を辞めてもらうことはできますか?

職場不倫の場合、配偶者の不貞相手に仕事を辞めてほしいと希望される方が珍しくありません。しかしながら、不貞相手が応じない限り、仕事を辞めさせることできません。

なお、不貞相手が仕事を辞めてしまうと、不貞相手が職場との利害関係を喪失するため、職場に不貞を暴露するなどの行為に出るケースもあります。その結果、配偶者が、職場で不利益な立場に置かれるリスクも存在します。

不貞相手は未成年者ですが、慰謝料請求できますか?

不貞相手が未成年者であっても、既婚者だと知って関係を持った場合には、慰謝料請求可能です。

ただし、18歳未満との性交渉は、不同意性交罪や都道府県条例(青少年健全育成条例等)に違反する場合があり、配偶者が罪に問われる可能性があります。また、未成年者(保護者)から、配偶者に対する慰謝料請求が行われる可能性があります。

実際の事例

請求側回収事例

妻の不貞相手が全面否認したため、訴訟提起して150万円の勝訴的和解を成立させました。

ある日、妻の携帯から、男性と親密なやり取りをするLINEを発見した男性からの相談です。LINEは、明らかに肉体関係を匂わせる内容でした。そこで、まず、本人が慰謝料請求したのですが、相手は不貞の存在そのものを否認しました。明らかな証拠があるにもかかわらず、否認されたのでは、全く話し合いが成り立ちません。どうすれば良いか分からず、当事務所に依頼することになりました。

弁護士としては、不貞そのものを相手が全面否認している以上、訴訟しかないと考え、訴訟提起しました。訴訟では、相手も弁護士をつけて、不貞を否定してきましたが、尋問の結果、裁判所から慰謝料を支払うようにと被告側に和解勧告がなされました。その結果、相手も観念して、150万円の和解に応じました。

不貞を否定する夫から慰謝料300万円を取得して離婚を成立させました。

夫が女性と一緒にいる現場を目撃してしまった女性の事例です。夫を問い詰めたところ、その女性は知人に過ぎないと言い張ります。しかし、女性からすれば、絶対にそうは思えません。夫から慰謝料を取って離婚したいのですが、不貞を認めない以上、交渉は難航しそうです。そこで、当事務所に相談に来られました。

弁護士が交渉したところ、やはり夫は不貞を否定してきました。しかし、女性と一緒にいたという夫の自白を録音し、「ただの知人」という弁解は不自然であり、到底認められないことを丁寧に説明して交渉しました。その結果、最終的には、300万円の支払いに応じさせることができ、養育費についても公正証書を取り交わして、離婚を成立させることができました。

妻の不貞相手が、不貞はないと否認してきたので、訴訟提起し、165万円の勝訴判決を得た事例。

相談者の男性は、妻と別居し、離婚調停中です。妻は、別居直後から男性と一緒に住んでいることが、住民票から明らかでした。そこで、妻には同居中から不貞があったと考え、その男性に不貞慰謝料を請求しました。ところが、男性は、「妻に収入がないから家を貸してあげているだけだ」と言って不貞を全面的に否定してきました。

訴訟でも、男性は一貫して不貞を否定しました。妻も証人として出廷し、家を借りているだけだと証言しました。しかし、妻と男性の間には、ある程度親密な関係を匂わせるLINEが残っていましたので、判決では弁護士費用を含め165万円の慰謝料が認められました。

請求を受けた側の減額事例

弁護士から不貞慰謝料請求の内容証明が届いたが、交渉した結果、10万円で和解した事例。

この方は、一時期風俗店に勤務しており、その仕事で、男性と性的関係を持ちました。その後、男性から好意を寄せられ、何度か店外で会ったそうです。ある日、男性の妻が依頼した弁護士から内容証明が届き、不貞行為を理由に慰謝料を請求するということでした。

風俗店における関係であっても、不貞であることに変わりはないとされていますので、慰謝料を支払わなければならない可能性があります。特に、本件では、店外でも会っていたことから、慰謝料請求が認められてもおかしくない事例でした。しかしながら、ご相談者の方は、あくまで仕事として関係を持っていたに過ぎず、しかも、男性のストーカーに似た行為から恐怖も感じており、男性を避けるために、風俗店を辞めなければならないという損害まで発生していました。到底、通常の不貞行為と同じような金額を支払うことには納得ができません。法的にも、風俗店における関係には故意過失がないとして、損害賠償が認められない場合もあり、認められても、少額にとどまる可能性がありました。そこで、このような事実関係と法律上の主張をして交渉した結果、10万円でスピード和解を成立させることができました。

400万円払うという合意書にサインした後、後悔して再交渉を希望。減額に成功した事例。

男性は、仕事で知り合った女性と不貞関係になってしまい、相手の夫から呼び出されました。誠心誠意、謝罪しましたが、その場で、慰謝料として400万円を払うという合意書にサインするよう要求されました。高すぎるのではないかと思い、減額を求めましたが、相手に強く言われ、断り切れずに、サインをしてしまいました。後日、サインをしてしまったことを後悔し、当事務所へ相談に来られました。

相場より高すぎる金額であることを丁寧に説明して、粘り強く交渉したところ、今後、不貞相手の女性との連絡を一切絶つことを条件に、100万円で合意し直すことができました。前に作った合意書は白紙撤回する旨を和解書面に明記しましたので、これで400万円を請求されることはありません。

慰謝料請求を受けたが、不貞を否認して、請求を断念させた事例。

ある企業で勤務していた女性。社長の妻に不貞行為を疑われ、弁護士から内容証明が届きましたが、不貞行為はありませんでした。それなのに、相手の弁護士からは責められるようなことを言われ、怖くなって相談に来られました。

まず、弁護士から、相手弁護士に対して、「不貞を否認するので即座に提訴してください」と要求しました。さらに、「一定期間内に提訴しないのであれば、支払義務がないことの確認を求める訴訟を起こす。」と警告しました。その結果、相手の弁護士から、委任契約終了通知が送られてきました。その後、社長の妻から再度請求を受けることもありませんでした。こちらの毅然とした態度により、慰謝料請求を断念したと思われます。

弁護士費用

  • 着手金 23万1000円~
  • 報酬金 17.6%

※分割払いも可能ですので、ご遠慮なく、ご相談ください。

不貞慰謝料請求を受けた人へ

天神ベリタス法律事務所では、請求側も、請求された側も、ご相談をお受けしていますが、請求を受けた方の事件には、特に注力しています。不貞事件の論点についても詳しく解説している特設サイトをご覧ください。

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