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犯罪被害

目次

犯罪の被害に遭われた方へ

当事務所では、開業以来、犯罪の被害に遭われた方からお問合せをいただくことが良くあります。法律事務所のホームページでは、犯罪の加害者弁護(刑事弁護)を積極的に宣伝する事務所は多数存在しますが、被害者弁護を宣伝する事務所は、いまだ少数に留まっています。当事務所では、犯罪の被害に遭われた方の支援を行っています。

県外の方からお問合せをいただくことがありますが、被害者弁護は、被害者の方のお気持ちを丁寧にお伺いする必要があり、直接お会いできない距離にお住まいの方からご依頼を受けるのは適切ではないと考えているため、大変申し訳ございませんが、福岡県以外にお住まいの方は、地元の法律事務所か公的機関にご相談されることをお勧めいたします。

公的窓口

警察署

犯罪の被害に遭ったら、警察に被害届を出すのが原則です。防犯カメラ映像の確保や、DNAの採取など、犯罪の種類によっては、時間の経過によって捜査が困難になる場合もあるため、まずは相談してみましょう。

被害者連絡制度(警察)
被害者や家族の希望により、被害者連絡員に指定された捜査員等が、捜査に支障のない範囲内で、犯人が誰か、犯人の逮捕状況、処分等について通知する制度です(「被害者連絡実施要項の改正について」平成29年7月12日付け検察庁丙刑企発第49号ほか)。ただし、対象は、要項が定める身体犯(殺人、強制性交、強制わいせつ、傷害(被害者が全治1か月以上の傷害を負ったもの)など)、重大な交通事故事件などに限られます。

被害者等通知制度(検察)
被害者や親族等に対し、事件の処分結果、刑事裁判の結果、加害者の受刑中の刑務所における処遇状況、刑務所からの出所時期などに関する情報を、参考人の方に対し、できる限り、事件の処分結果、刑事裁判の結果、加害者の刑務所からの出所時期などに関する情報を提供する制度で、事件の捜査担当ないし公判担当の検事から通知がなされます(被害者等通知制度実施要項~平成19年12月1日改定法務省刑事局)

自治体相談窓口

福岡犯罪被害者総合サポートセンター (公益社団法人福岡犯罪被害者支援センター)
電話番号 092-409-1356
相談受付時間  月曜日~金曜日 午前9時から午後4時まで

性暴力被害者支援センター・ふくおか (公益社団法人福岡犯罪被害者支援センター)
電話番号 092-409-8100
相談受付時間  24時間・365日(年中無休)

加害者の弁護士から示談の提案があったら

加害者の弁護士から示談の提案があったら、次の点を考慮して、示談に応じるかどうか、慎重に検討する必要があります。

示談すると加害者に有利な処分になる可能性が高い

示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高くなりますし、起訴されても、罰金や執行猶予など、量刑が軽くなる可能性が高くなります。その意味を十分に理解して、示談に応じるか検討する必要があります。

示談しなくても民事で賠償請求できる

加害者側の提案に応じることが唯一の選択肢ではありません。民事訴訟を起こして、賠償請求をすることは可能です。ただし、時間も費用もかかりますし、加害者が刑務所に行くことで支払能力がなくなる場合もあるので、注意が必要です。

弁護士の目的は刑事弁護であって示談は手段でしかない

加害者側弁護士が刑事弁護の依頼しか受けていない場合、示談は刑事処分を軽くするための手段でしかありません。したがって、刑事事件が終了すると権限を失いますし、示談しなくても有利な結果になると判断すれば、刑事事件の途中でも、示談提案を撤回する可能性があります。いったん断っても、気が変われば、いつでも示談できるというわけではありませんし、加害者側弁護士から、再提案があるとは限りません。

示談は民事の賠償より有利な場合もある

示談は、刑事処分を軽くするため、民事の賠償金に上乗せして提案されている場合もありますが、これを断ってしまうと、相場通りの賠償金しか受け取れなくなり、しかも、自分で民事訴訟を起こさなければならなくなります。また、加害者本人の支払能力がない場合、家族が示談金を用意していることもありますが、これを断ってしまうと、支払能力のない本人からは賠償金を受け取れなくなる可能性があります(家族は加害者の刑事処分を軽くするために示談金を肩代わりするのであって、結果が出てしまえば、肩代わりする理由はなくなってしまいます)。

起訴されたら匿名ではいられない

現在の運用では、被害者が匿名のまま刑事裁判を実施することはできません。起訴されると、あなたの名前が加害者に知られることになります。また、証人として法廷に呼ばれることもあります。これらの点も加味して、本当に刑事処分を求めるべきかどうか、慎重に検討する必要があります。

被害者支援の解説

法律相談(5,500円/30分)

犯罪被害に遭われた方の中には、様々な誤解をしている方がおられます。まずは、正しい知識を身につけ、刑事手続の流れを理解しましょう。

被害者の方が誤解されていた例

  • 加害者から必ず示談の提案がある?
    →示談の提案がない場合も珍しくありません。
  • 不起訴になっても加害者の弁護士と示談交渉できる?
    →不起訴になったら刑事弁護人は任務終了なので、交渉できません。
  • 被害者はずっと匿名でいられる?
    →被害者を匿名にしたまま起訴されることはありません。

また、加害者側の弁護士が言っていることが正しいかどうかが分からず、困惑している方もおられました。法律相談に来て頂ければ、詳しい状況を確認した上で、加害者側弁護士が、どのような意図で動いているかを予測して、方針をアドバイスさせていただくことが可能です。

刑事告訴(11万円~33万円/1件)

告訴とは「犯罪の被害者その他法律に定められた告訴権を有する者が、捜査機関に対して、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示」です。被害届は、犯人の処罰を求める意思表示を含まない点で、告訴と異なります。しかし、告訴を受理してもらうのは、簡単ではありません。警察は、ほとんどの場合、最初から告訴状を受理することはありません。殺人とか、重大な傷害事件とか、ひったくりなど、明らかな犯罪であれば別ですが、そのような事件であれば、告訴がなくても、被害届だけ出しておけば、警察は動いてくれます。告訴をしなければならないということは、証拠が乏しかったり、犯罪であることが微妙であったりという理由で、警察が簡単には動いてくれない事件だからです。また、警察は告訴を受理すると「速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない」(刑事訴訟法242条)とされていることも、受理に消極的になる理由の 一つです。

告訴を受理してもらうには、犯罪が成立することについて、法律的観点から分かりやすく記載し、証拠を添付することが重要です。法律解釈や事実関係の点から、犯罪の成立に疑問符が付くと思われないような記載を目指す必要があります。また、できる限り、証拠を整理して添付する必要があります。

また、このように準備をして、告訴状を提出しても、警察の方で、十分な証拠が揃うまでは、正式受理を控え(「預かり」といいます)、証拠が揃ってから、正式に受理するという運用が見られます。このような場合、告訴状を提出した後、警察の証拠収集に協力することも必要になります。

民事崩れの告訴
告訴を受理してもらうためには、警察に、民事事件のために告訴をするとは思われないようにすることが重要です。たしかに、加害者は、刑事事件の捜査が進行していると、被害者に有利な示談を提案してくる可能性が高くなるので、告訴が民事事件にとって有利になることもあります。しかし、せっかく捜査しても、示談が成立して、被害者が告訴を取り下げてしまうと、警察としては、梯子を外された形になります。単に民事事件を有利に進めるためだけの告訴であると思われると、告訴の受理の障害になるため、刑事と民事をどう処理するか、事前に方針を十分練っておく必要があります。

民事事件の交渉・訴訟代理(着手金23万1,000円~)

犯罪の被害に遭った方は、民事上、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることができます。法律上は、犯罪以外の不法行為(たとえば不貞の慰謝料請求など)と同じ扱いですが、実務上は、いくつかの特殊性があります。

刑事弁護人からの示談提案に対する対応

刑事事件が進行している場合、刑事弁護人から示談の提案がなされることがあります。この場合、刑事処分を免れるために、民事上の責任を超える有利な示談が提案されることもあります。また、加害者本人にお金がなくても、加害者の家族が示談金を援助する場合もあります。このような被害者に有利な提案は、あくまで刑事処分を免れたいという動機で行われることが多いので、刑事弁護上の必要性がなくなれば、撤回されることもあります。有利な示談を獲得するチャンスを逃さないためには、民事上の賠償相場や刑事弁護人の思考などを十分理解して、交渉に臨む必要があります。

逆に、刑事処分を免れたいために、お金がない加害者が、ダメ元で、民事上の責任を大幅に下回る示談を提案してくる場合もあります。このような場合、安易に示談に応じてしまうと不利な結果に終わってしまいますが、かといって、後になってから、お金がない加害者から賠償金を取るのも困難であるため、一部でも賠償金を獲得するチャンスとも言えます。

刑事弁護人は、あくまで刑事事件の弁護のために、示談を提案しているだけです。したがって、示談が成立しなくても、不起訴が見込める場合などには、示談を提案しない場合もありますし、交渉が決裂したら諦めて、他の方法で加害者に有利な結果を目指すこともあります。示談は、あくまで一手段であって、刑事弁護人にとって、常に必須というわけではないという点に注意しなければなりません。また、不起訴になったり、刑事事件の判決が出たら、刑事弁護人としての任務も終了なので、それ以降は交渉することもできなくなります。

刑事事件記録の閲覧・謄写

刑事事件の記録を閲覧・謄写することで、民事上の損害賠償請求の証拠を入手することが可能な場合があります。もちろん、被害者自身が、被害内容を十分把握しており、証拠も十分な場合には、常に必要なことではありませんが、交通事故の場合は、ドライブレコーダーなどが残っていない限り、刑事記録を確認しなければ、どのような事故だったかが分からないこともありますし、被害者がお子様(未成年)の場合には、被害者本人から事情を聴いても要領を得なかったり、精神的・情緒的に負担になったりすることがあるので、刑事記録に頼らなければならないことがあります。

刑事事件における特殊な賠償制度

損害賠償命令制度(一定の犯罪について、刑事事件を担当している裁判所に対し、損害賠償請求についての審理を求めることができる制度)、刑事和解制度(刑事事件の係属する裁判所に対し、被告人及び被害者等が共同して申し立てることによって、両当事者間の民事上の損害賠償の合意を刑事事件の公判調書に記載することを求めることができる制度)など、民事訴訟以外の特殊な選択肢があります。しかし、損害賠償命令制度は、被告人から異議申立てがあった場合には、通常の民事訴訟に移行しますし、刑事和解制度は双方の合意がなければ使えません。これらの制度は、個々の事件に適していれば便利ですが、使いどころを判断する必要があるため、弁護士のアドバイスが重要になります。

住所の秘匿

民事訴訟や損害賠償命令制度では、住所を加害者に知られたくない場合、代理人弁護士の事務所住所を記載する方法が認められています(ただし、氏名は秘匿できません。)。

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